自ら生まれるやうになりたい。

自ら生まれるやうになりたい。

2022年05月07日 07:03

ゴールデンウィークは芸術を楽しんでいて、3月から開催されていたこちらの展覧会にやっと行ってきました! 「鏑木清方展」 https://kiyokata2022.jp/

 

かをりの高い絵を作りたい。

作りたいより自ら生まれるやうになりたい。

(『かをり』昭和9年1月)

 

これは、鏑木清方がかつて随筆に記したことばだそうです。

香高い作品が自ら生まれるように、作品を出していきたい。作るのではなくて。と私は理解しています。”自ら生まれる” という言葉に本質や自然であることを感じ、魂が発露するような体験にはやはり喜びがあるのだろうと思いました。

自分もそこへの憧れを抱く人間の一人として、この言葉に共感したのでした。

鏑木清方は、「歌舞伎」という雑誌の創刊号から挿絵を担当していたらしく、歌舞伎俳優や演目などに関連した作品もたくさんありました。特に「京鹿子娘道成寺」は、まるで舞台を連写したかのように作品が並べられていて、これまでに自分が見てきた玉三郎や菊之助の舞踏がそこに繰り広げられているようでかなり楽しめました。

印象的だったのは、よく美人画を依頼されるけれども本人としては生活を描きたいと思っていたこと。そして、彼は戦争の絵は描かなかったこと。(国立近代美術館には、著名な日本画家による戦争の絵が複数、展示されています。当時の政府が戦意発揚のために描かせたのだと思います。これらの作品には、え?これがあの画家の作品?!と驚かされます。)きっと、作家として守ると決めていたことがあったのだろうと推察します。もしかしたらそのことで、乱暴な言葉を浴びせられたり、脅されたりしたかもしれませんが、戦時中でもうつくしい絵を描きつづけたそうですから、人々にとってはいやし、なぐさめとなっていたことでしょう。

美は心のバランスを保つ、正常化する、収まるところに収まると私は思います。