虚栄は地獄
何かすごいこと書いてそうなタイトルですけど、無声のコメディ映画です。
昨夜、早稲田の演劇博物館の前庭で、野外上映会があり、興味深かったので行きました。弁士の語り口やピアノの伴奏も軽やかで、楽しめました。
若い夫婦が、お互いの職業を偽って結婚しているという設定です。家庭のシーン。見た目は裕福な生活をしています。夫は銀行員と言いながら銀行の玄関先で靴磨きを。妻は大会社の秘書と言いながらバスの切符係です。ところがあるとき、お互いの本当の仕事がバレます。そこで、嘘をつくのはもうやめようということで、二人仲良く正直に生きていきます。
たぶん、嘘をついていた生活をしている段階で、すでに地獄にいる気分だっただろうと思います。なぜなら、裕福な生活を送っていたとしても、それは高利貸しからのお金であって、本当に自分が稼いだお金ではないですし、職業を偽って、本当の自分は隠して「自分は素敵な人間だ」と見栄をはらないとならないなんて、悲し過ぎます。
でも、これって、パターンで生きてるときにやっていることですよね。嘘をつくつもりはないけれど、本当の自分を認めてしまったら、恋敵に勝てないとか、入りたい学校に入れないとか、就きたい仕事に就けないとか、だから面接などでは、間違っても本当の自分なんて出さないですよね。皆、よく見せようとします。日常の人間関係でも、そうです。うまくやっていくために見せ方を工夫します。社会人としてはそうせざるをえないでしょう。
・・本当の自分のままでいい・・
そういう映画はたぶんドラマに欠けていて面白みがないので、興行的に成功はしないでしょうけれども、自分自身が自分のすべてを肯定できたとき、そのあり方はきっと生命力に溢れているのだろうと想像します。
虚栄をいっぱい生きてきている私としては、そこに疲れています。いつか「実は、大丈夫だったんだねー」という体験をしたいです。そうして映画の二人のように正直に自分の人生を生きたいです。