ミュンヒハウゼン
先日読んだ『健康の分かれ道〜死ねない時代に老いる』(久坂部 羊・著)には、「弱者」に関してもおもしろい記載がありました。以下、抜粋です。
人間の心は複雑で、病気になることで周囲から同情され、ちやほやされることが快感となり、わざと自分から病気になる(故意に怪我をするとか、感染するとか、身体に悪いものを食べる等)人もいて、「ミュンヒハウゼン症候群」と呼ばれています。(P.158-159)
これは、病気に限らないです。高校生の頃、小学校・中学校でいじめられた体験をよく話題にしていました。それを話題にすると「え〜見えな〜い!」とか「かわいそうだったね」とか言ってもらえるからです。
ある時に、「その話、よくするよね」とともだちから言われて「はっ!」と気が付いたのでした。
「あの頃はつらかった」という思いを誰かになぐさめてほしかった気持ちはあったと思うし、周囲からの同情やちやほやが快感となっていたのは否めません。自分で自分をケアすることを知らなかった当時の私としては、そういう周囲の反応をあたたかく受け止め、傷ついた心が癒されるように感じていたと思います。
パターンは、あの手この手で人を自分に引きつけようとします。
社会を見ていても、「弱者はかわいそう」という決めつけによって、弱者ビジネス・被害者ビジネスが蔓延していたりもします。ミュンヒハウゼンは『ほら吹き男爵の冒険』の男爵の名前らしいですが、この男爵を利用する人たちもいて、彼らは、「弱者」が立ち直ることは望まず、「弱者」のままでいてもらわないと困ると言わんばかりに生きる力を奪っているように見えます。「代理ミュンヒハウゼン症候群」というものもあるようですね。
弱者・被害者には権力者・加害者という意味づけもできます。やはり自分と向き合い、人のせいにしないことで、あらぬ方へと物事を進展させることなく、本質的な改善をはかっていきたいと思います。