『日本振袖始』とミームに関する考察

『日本振袖始』とミームに関する考察

2020年12月23日 07:57

歌舞伎座で見た演目『日本振袖始』の、八岐大蛇が妖術でお姫様を生贄にして、そこに素盞嗚尊が現れて大蛇を退治!お姫様は救出されて〜というストーリーは、スパイラルダイナミクス的にはベージュ〜パープル〜レッド〜ブルーの世界観だなぁ・・と胸を過ぎりました。
この話には、村人たちがお姫様に「村のために、私たちを助けると思って生贄になってください」と懇願する場面もあるんです。え?とちょっと信じられないですが、でも、わからなくはない。
『日本振袖始』は近松門左衛門が原作で、享保三年(1718年)に初演されています。今から300年前。ちょうどオレンジのミームが出てきた頃のことです。それを考えるとこのストーリーラインも納得です。当時の観衆にとってはもっともっと心身に迫りくる、怖くて恐ろしいリアルな演目だったかもしれません。素盞嗚尊が登場した時などは、破れんばかりの喝采が起きたことでしょうし、大蛇退治を頼んだぞっ!と誰もが思ったのではないでしょうか。
そして、オレンジののちに、グリーン、イエロー、ターコイズがすでに出現していると言われている今、この演目を見ている私も、十分にこのストーリーを楽しんでいます。全然関連性を感じられず、意味もわからず、つまんな〜い!とはならずに。むしろ、妖術を使って人を生贄にしようとしている大蛇に怖さを感じ、それ退治だ!退治だ!!と固唾を飲んで戦いを見守っています。もちろん時代的な乖離は感じるし、日常的なリアルさはありません。剣で相手を刺したりもしないですしね。だけど、楽しんでいる。これは、自分の中のベージュ〜パープル〜レッド〜ブルー〜が呼び起こされているのだと思いました。
一人の人間の中に異なる価値システムがいくつもあることに感心するし、これまでそれぞれの意識レベルを超えてきたことも感慨深い。今、剣で相手を刺したりしないということも、当時そのミームだった自分には想像できないでしょうが、今、安心してこの舞台を楽しんでいるのは、そうしたミームを体験してきていて、それぞれのミームを心底理解しているからなのではないだろうか? と思うのです。